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自律神経失調症の漢方療法

めまい下痢不眠冷え性疲れ自律神経失調症

他院で自立神経失調症や不定愁訴症候群などと診断されるも、漢方薬で効果があった症例を集めてみました。西洋医学で自立神経失調症などと診断されても、東洋医学では下記のように様々なパターンがあるのです。人それぞれという訳です。まずはその例を見てみましょう。

①(43歳男性)三ヶ月前からみぞおちあたりに痛みがあり、イライラが強く、口が乾き、不眠気味、便秘が続き、手足の冷えがありました。4年前にも同じような症状がでたことがあります。会社の人間関係がうまくいかなくなって辛くなったときに、前回も今回も起こりました。

四逆散という漢方薬を出されました。この薬を飲んだところすぐにみぞおちの所が痛まなくなり、不思議な事に便秘が改善したのです。「こころ」も落ち着き、いらいらしなくなりました。

②(54歳男性)イライラして夜眠れなくなりました。約二ヶ月前から仕事が忙しくなって残業も増え、その疲労が重なったと思われます。不眠以外にも、とても体が熱くなり顔がホテるようになりました。その他肩・後頭部のコリ、頭痛などがありました。 黄連解毒湯という薬を飲みました。とても苦い薬でしたが、がんばって飲みました。すると体のホテリやイライラ、頭痛などが良くなり夜も眠れるようになりました。

③(46歳女性)数日前から気だるくて重い感じがあり、手足が冷えてきました。胃がもたれ、口の中がネバネバして吐き気もありました。めまいや、下痢も時々起こりました。

五苓散という漢方薬をもらいました。まず胃の具合が良くなりました。もたれ感がなくなり、下痢もしなくなり、口の中のネバネバも消えました。めまいも起こらなくなり、体のだるさもなくなり、体がシャキッとした感じです。

④(50歳女性)全身がひどくだるい。体に力が入らない感じがする。すぐに汗を書き息切れする。顔の色が悪く、皮膚はカサカサ、目の前がチカチカした。元々胃下垂ですが、下痢ぎみでした。

十全大補湯、これがもらった漢方薬です。飲むとおいしい感じがして、気楽に飲めました。飲み始めた最初はそうでもありませんでしたが、一週間、二週間と飲むにつれてだるさが取れていきました。何か若返ったみたい、と近所の人に言われているこの頃です。

⑤(46歳女性)頭痛がひどくよくのぼせました。すぐに汗をかき吐き気もあり、口の中が乾きます。トイレも近く、おしっこが残っている感じがしました。膀胱炎だと思い、内科を受診したのですが、尿検査は正常ということで、膀胱炎はないと言われました。便秘も若い頃よりひどくなりました。 桃核承気湯という漢方薬をいただきました。これを飲んで驚いたのは、まず便が気持ち良く出たことです。頭痛やのぼせもなくなりました。おしっこも残っている感じがしなくなったのです。

担当医(三浦医師)の話

5人とも西洋医学の医院で自律神経失調症と診断された方々です。この5人の方の東洋医学的病気の状態は以下のように考えられます。

気滞 (けったい)

熱証

痰飲 

気虚血虚

瘀血

色々なパターンがあることがわかったと思います。それでは一例づつ簡単に説明していきましょう。

気滞-全身の臓器や「こころ」の働きがのびのびと行われて、初めて社会生活にうまく適応できるのです。そのためには、体にエネルギー・活力を与え、各臓器がばらばらに働かないように調節していく必要があります。この働きをするものを、東洋医学では「気」と呼びました。「元気になる」の気です。つまり各臓器にこの「気」がおもむき、エネルギーを与え、スムーズに働くようにしているのです。

この気がうまく働かないと色々と不都合が生じてくるのです。この気がスムーズにめぐらない状態を「気滞」と言います。気がめぐらなくなり、あちこちに滞在してしまうというわけです。  この気滞になるとイライラしたり、不眠になったり、お腹が痛んだり便秘になったりするのです。四逆散という漢方薬は、この気滞を改善する、つまり気のめぐりをよくする働きがあるのです。

熱証-怒りの気持ちをあらわすとき、「カーッと頭に血がのぼって顔が熱くなった」ということがあります。このようにイライラ感、顔や頭ののぼせ感、怒り、緊張などの発散的、動的な症状を、漢方では「火」が燃え上がって体が熱くなったととらえます。

黄連解毒湯というのは、この燃え上がった火を抑え熱をしずめる働きがあります。

痰飲-水に濡れた布は重くて冷たいものです。そのように生体における重だるさや冷え、精神の気だるさは、体内に異常な水分が停滞したために起こると考えられています。この状態を痰飲と呼びます。症状としては胃のもたれ、口のねばり、嘔吐、下痢などの消化器症状、めまい、頭重感、ヒステリーなどもあります。

五苓散には余分な水分を取り除く作用があります。よく下痢に用いられます。昔は道中薬として、旅人が持っていった薬でした。

気虚血虚-生体は気と血という二つの要素から成り立っている、と漢方では考えられています。気は生体を生かしていく力、つまり生命力です。血は生体を形づくっているものです。気の力の不足(生命力の低下)を気虚といい、全身倦怠感、無気力、すぐに汗をかく、息切れがするなどの症状となってあらわれるとされています。血の不足を血虚といい、顔色が悪い,皮膚乾燥、動悸、月経異常などの症状があります。

十全大補湯はこの気虚と血虚を改善する働きがあります。全身的にまんべんなく元気にしようという薬なのです。

瘀血-瘀血とは全身をめぐっている血がとどこおり、スムーズに流れない状態です。症状は実にさまざまでのぼせ、頭痛、しびれ、口が乾く、発汗、黒っぽい便が出る、腹がはる、月経障害、頻尿、残尿感、イライラ、怒りっぽい、緊張しやすいなどがあります。

桃核承気湯は、元気な人の瘀血に用いられる漢方薬になります。冷え性の瘀血、弱い人の瘀血など様々な瘀血があり、薬も異なってきます。

このようにその人の病気を細かく分類し、その人に合った薬を決定します。気滞ならば、気のめぐりをよくする薬、熱証ならば熱を静める薬、痰飲ならば体内の水分排泄を良くする薬、気虚と血虚ならば気と血の働きをよくして元気にする薬、瘀血なら血のめぐりをよくする薬などです。

もうおわかりのように、自立神経失調ならこの薬といった治療ではなく,患者さん一人一人に合った治療をするのが漢方です。

ここでは自立神経失調症を例にとりましたが、他の病気も同様です。胃腸病なら胃腸病の分類があり、薬の組み合わせがあります。しかも、病気の原因は必ず一つとは限らず、例えば気滞と熱証が融合していることも珍しくありません。

少し漢方知識のある人は実証虚証と言うことばをご存じでしょう。その人の症状を診断するとき、虚・実・寒・熱は漢方の基礎です。虚は弱い、実は強い、寒は寒い、熱は熱いという状態です。その人によって、虚も実も、寒も熱も存在することがよくあります。病気とはそれほど複雑なものと言っていいでしょう。

その複雑なものをときほぐし、一つ一つ症状を消し、全身状態の向上をはかるのが、漢方療法なのです。

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