副作用を起こしやすい漢方薬(生薬)にはどのようなものがありますか
日常よく見られるものは、まず地黄(じおう)・阿膠(あきょう)などの補陰薬や黄連(おうれん)・黄芩(おうごん)などの清熱解毒薬による胃腸障害、大黄(だいおう)など下剤による下痢、茯苓(ぶくりょう)・薏苡仁(よくいにん)などの利水薬による便秘、附子(ぶし)などの毒性薬物によるものなどです。これらの生薬が配合されたエキス剤や煎じ薬で、不快な症状が出現しやすいわけです。ただくりかえしになりますが、証に合わない漢方薬を飲んだときに出現することが多く、合っていれば出現率は非常に少なくなります。証に合っていない場合は、 副作用を起こしにくい漢方薬であっても、副作用が出現しやすくなってしまうのです。
副作用の出現しやすい漢方薬(生薬)については表に示しますので、参考にしてください。
副作用が起こりやすい主な生薬 1
附子(ぶし)
[作用] 体を温め、活動を活発にし、痛みを取る。
[有害症状] 多量や未炮製、不適応の服用で中毒症状を起こすことがある。
[方剤]桂枝加朮附湯、真武湯、八味丸、牛車腎気丸、麻黄附子細辛湯、大防風湯など。
麻黄(まおう)
[作用]気管支拡張作用があり、喘息や咳に使用。
[有害症状]虚証や高血圧、心疾患の人に使用すると動悸、興奮、発汗、尿閉、血圧上昇、胃腸障害などが起こることがある。
[方剤]麻黄湯、葛根湯、小青竜湯、麻杏甘石湯、麻黄附子細辛湯、五虎湯など。
大黄(だいおう)
[作用]排便・清熱・駆瘀血作用がある。
[有害症状]下痢や腹痛、胃腸障害。冷えて体力が弱った人(虚寒証)や胃腸が虚弱な人に起こりやすい。
[方剤]大黄甘草湯、大承気湯、桃核承気湯、麻子仁丸など。
人参(にんじん)
[作用]体を温め生命力や消化機能を高める。
[有害症状]元気な人に使用するとのぼせや熱感、動悸、湿疹などが出現することがある。
[方剤]人参湯、補中益気湯、六君子湯、十全大補湯など虚寒証の方剤。
副作用が起こりやすい主な生薬2
地黄(じおう)・当帰(とうき)・阿膠(あきょう)
[作用]体の水分や血行などの物質面を補う。
[有害症状]胃腸の虚弱者(脾気虚証)に使用すると、胃痛や胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢などの胃腸障害が出現する。
[方剤]四物湯、当帰門薬散、八味地黄丸、六味地黄丸など。
黄連(おうれん)・黄柏(おうばく)・黄芩(おうごん)
[作用]体の熱と湿気を取り去る。実熱証に使用される。
[有害症状]冷え性の胃腸虚弱者に使用すると、食欲不振、下痢や便秘、胃部不快感などの症状が出現しやすい。
[方剤]黄連解毒湯、温清飲、防風通聖散、三黄瀉心湯、柴胡清肝湯など。
茯苓(ぶくりょう)・蒼朮(そうじゅつ)・薏苡仁(よくいにん)・縮砂(しゅくしゃ)
[作用]胃腸の水分を取り消化を助け、下痢を止める。
[有害症状]正常便で不適応な証に使用すると便秘となる。
[方剤]二陳湯、平胃散、六君子湯、五苓散など。
竜胆草(りゅうたんそう)
[作用]体の熱を取り水分を排泄する。
[有害作用]消化器が弱く冷え性の人(脾胃虚寒証)に使用すると胃腸障害を起こす。
[方剤]竜胆瀉肝湯など
甘草(かんぞう)
こちらを参照
副作用が起こりやすい主な生薬3
毒性がある漢方生薬
[強い毒性]
甘遂、大戟、巴豆、洋金花、朱砂、烏頭など。
[中度の毒性]
附子、白花蛇、沢漆、苦楝皮、木通、半夏、天南星、白附子、全蝎、罌栗穀、蜈蚣など。
[弱い毒性]
呉茱萸、川楝子、䗪虫、水蛭、乾漆、半夏、天南星、白附子、皀莱、杏仁、白果、露蜂房など。
排便作用のある主なエキス方剤
[下剤]
大承気湯、大黄甘草湯、麻子仁丸、桂枝加芍薬大黄湯、調胃承気湯、潤腸湯。
[駆瘀血剤]
通導散、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、桂枝茯苓丸、治打撲一方。
[血虚証]
四物湯、加味逍遙散、当帰芍薬散(いずれも軽度のもの)。
[脾胃剤]
大柴胡湯、茵蔯蒿湯。
[その他]
防風通聖散、三黄瀉心湯、乙字湯、九味檳榔湯。