多くの漢方薬の説明書に甘草の副作用として、低カリウム血症・偽アルドステロン症などに注意とあります。また甘草は浮腫を起こすと聞いたことがありますが……
甘草(かんぞう)は漢方薬同士の働きをマイルドに調和させ、かつ胃腸の作用を高めるもので、エキス剤の約7割に配合されています。また解毒作用もあり、とくに麻黄(まおう)や附子(ぶし)の毒性を緩和することでも知られています。これを裏づけるように、草から取り出されたグリチルリチンという物質には抗アレルギー作用や抗炎症作用があり、じんましんや薬疹、肝炎などに西洋薬として使用されています。
こう見てくるとよいことばかりのようですが、この甘草が時として偽アルドステロン症を引き起こし、その結果低カリウム血症などの電解質代謝の異常が出現する場合があると注意を促しているのです。
アルドステロンとは副腎皮質から出るホルモンの一つで、腎臓に作用して体液の電解質のナトリウムを再吸収し、カリウムの排泄を促す作用があります。アルドステロンの作用が強まると、ナトリウムがより再吸収され体液のナトリウムが増え、同時にカリウムが減ってしまうのです。体液の濃度は一定に保たれますから、高ナトリウム血症となるとそれに伴い水分も増えてしまうのです。つまり濃くなった分を水で薄めようとするわけです。その結果、浮腫や体重増加、さらに血液量が増え血圧も上昇したりするのです。
実は東洋医学でも甘草は体を潤す作用があるとされ、浮腫など余分な水分がたまったと思える人には、その使用を禁止しています。経験的に甘草の副作用を知って使用していたわけです。
また低カリウム血症となるとミオパチー、吐き気や嘔吐、多飲、多尿、心電図の異常などの症状があらわれます。 ミオパチーとは、筋肉の脱力感や痙攣、まひなどが起こるものです。
このように書いてくると恐ろしい副作用のようですが、実際は非常に少ないものです。もし出現しても中止すればすぐに軽快します。ですからあまり神経質になることはないでしょう。とはいえ注意が必要で、まず漢方薬を飲む前まではなかった水分がたまったような以下の症状が出てきたら、すぐに相談することが早期発見につながります。体が重だるい、頭痛、頭が重い、靴下の後がはっきりつく、指輪が人らなくなる、足のスネがへこむ、靴が小さく感じる、筋肉痛があるーなどの症状です。
甘草を含有する製剤に関する使用上の注意
(ツムラ医療用添付文書より)
*一日量として甘草を2.5g以上含有する場合
(1)次の患者には投与しないこと
1)アルドステロン症の患者
2) ミオパチーのある患者
3) 低カリウム血症のある患者
(2)副作用
1)電解質代謝:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定など)を十分に行い、異常みとめられた場合には投与を中止すること。
2) 神経・筋肉:低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣、麻痺等の異常がみとめられた場合には投与を中止すること。