漢方薬にはどのくらいの種類があり、日常の診療には何種類ぐらいが使用されるのですか
漢方薬の歴史は古く、紀元前1世紀の『詩経(しきょう)』には約100種類の薬が記載されているといわれます。時代とともにその種類は増え、漢代の「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には365種類、明代(1590年)の『本草綱目(ほんぞうこうもく)」には1892種類、そして、現在中国で発行されている『中薬大辞典(ちゅうやくだいじてん)』には、5767種類の薬物が記載されています。
このように漢方薬は時代とともに増え、現在知られている漢方薬の種類には驚くべきものがあります。とはいえ、これらがすべて使用されるわけではありません。前記『中薬大辞典』のなかには、治療には使用されない食物(止咳作用の梨など)、 産地が遠く手に入らないもの(沖縄で取れる海ヘビなど)、取れる量が少なく高価なもの、他の種類で代用が可能なものなども多く含まれているからです。
では実際に使用される漢方薬(生薬)の種類ですが、たとえば南京中医学院付属病院には約500種類、日本医科大学付属病院の東洋医学科では約250種類の漢方薬が使用されます。このうち日常の治療でよく使用されるものは、中国では250~300種、日本の中医学に基づいて治療する所では約250種、日本の伝統的漢方の病院・診療所では100~150種が使用されます。このうち最も常用されるものは中国で約150種類、日本漢方では100種ぐらいでしょう。
日本の伝統的漢方で使われる種類が少ないのは、中国よりの輸入が困難で少ない種類しか使用できなかった江戸時代に成立したやり方を、現在でもつづけているためと思われます。