漢方薬に副作用はありますか。あるとすればどのような症状でどのくらいの割合で起こるのでしょうか

近年、八味丸(はちみがん)による食欲不振や吐き気などの胃腸障害、小柴胡湯による死亡例など、漢方薬による副作用が報道されました。もちろん漢方薬も薬であり、やはり副作用があります。そして副作用があることは古くより知られており、その対策も考えられてきているのです。 

とはいえ西洋薬よりは、ずっと症状は軽く出現率は少ないのも事実です。ただ厳密にいうと、いわゆる西洋薬の副作用とは異なる面もあり、同列には考えられない場合もあります。 では実際どの程度の副作用が起こるのでしょうか。まず薬全体から見てみます。

平成2年度の厚生省に報告された医薬品の副作用モニター報告によれば、1233例の副作用症例のうち、漢方製剤の副作用は9例(0.72%)であり、流通しているすべての薬のなかに占める漢方薬による副作用の制合は非常に少ないことがわかります。 

次に漢方薬治療のなかでの副作用の制合を、当クリニックの調査から見てみます。1147人を調査したところ、3977種類の異なった漢方薬が処方されており、このうち41件に不快を伴う症状、いわゆる副作用が出現しています。つまり、100の処方された漢方薬のうちの約1件に、また漢方薬を飲んだ100人のうち3.6人に、それぞれ副作用が起こっているわけです。しかしその割合は決して多いとはいえないでしょう。 

出現時期ですが、78%は投与後3日以内であり、10日以内にほぼ全例が出現しています。つまり副作用は飲んですぐに起こることがほとんどであり、服用後2週間以上たって不快な症状が出現したものは、まず漢方薬の副作用の可能性は少ないといえるでしょう。 

具体的な症状ですが、当クリニックの例と日本東洋医学会の調査例とを挙げてみます。表(漢方薬の副作用)のように食欲不振・腹・もたれ感・下痢・便秘などの胃腸障害が5割から6割に見られ最も多いものです。次は湿疹・掻痒感・むくみなどの皮膚症状が2割から3割みられます。副作用の7~8割がこれらの症状となります。さらにめまい・のぼせ・動悸のような神経系の症状が起こっています。このように大多数は消化器と皮膚の症状であり、かつ重い副作用である有名な附子中毒は0.9%(筆者は1例)、甘草によるものは1.4%と非常に少ないものです。 

副作用出現後の経過ですが、筆者の例では6割強が服用の中止で、約2割が薬の量を半分にすることで、それぞれ回復しています。その他も表(副作用の経過)のように、良好な経過をとっています。また食後の服用で軽快する例もあり、食前服用で不快が出る場合には、食後の服用に切り替えることで副作用防止に役立つこともあるようです。さらに、中止せずにそのまま服用し回復している例が5件ありますが、うちの4件はいわゆる瞑眩(めんげん)と思われるものです。 

また副作用を起こした漢方薬のうち、有効であったのは23%で、64.5%は無効でした(不明のもの12.5%)。これは、無効な漢方薬を服用すると副作用がより起こりやすいことをあらわしています。 

以上のように、漢方薬の副作用は決して多いものではなく、そのほとんどが中止するか量を減らせば回復する軽度なものです。また無効例に多く有効例では少なくなっていますから、より適切な漢方薬を医師が処方し得るかどうかが、副作用防止のカギといえそうです。

漢方薬の副作用

日本東洋医学会「漢方と健康保険に関するアンケート 第2回」721例中の複数回答より

胃腸障害530例(50.8%)動悸10例(0.9)
発疹204例(19.6)附子中毒10例(0.9)
浮腫63例(6.0)脱力感7例(0.7)
薬疹39例(3.7)鼻出血7例(0.7)
低カリウム15例(1.4)発汗(脱汗)6例(0.6)
かゆみ15例(1.4)口内炎5例(0.5)
めまい15例(1.4)肝障害4例(0.4)
のぼせ13例(1.2)アルドステロン症4例(0.4)
血圧12例(1.2)しびれ3例(0.3)
頭痛11例(1.0)その他62例(5.9)

副作用の経過

中止で好転26例(63.4%)
減量で好転7例(17.0%)
飲みつづけて好転5例(12.2%)
食後服用で好転2例(4.9%)
不明1例(2.4%)
41例(100%)

漢方薬の副作用(複数回答) – 筆者の例 

具体的症状
消化器症状31例 (62%)軟便・下痢(10例)
腹痛・胃痛(7例)
吐き気・嘔吐(4例)
胃部不快(4例)
便秘(3例)
口角炎・舌痛(2例)
食欲不振(1例)
皮膚症状12例(24%)湿疹(8例)
掻痒感(3例)
浮腫(1例)
神経症状5例(10%)動悸(1例)
めまい(1例)
胸苦しさ(1例)
不眠とイライラ(1例)
眠気(1例)
その他2例(4%)体・下肢のだるさ(2例)

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