漢方薬と民間薬とはどう異なるのですか

民間薬というと、ドクダミやゲンノショウコ、クコ、メグスリノキあるいはクズやショウガなどが思い浮かぶでしょう。カゼの引き始め、昔はよくくず湯を飲まされたものです。体が熱っぽくて食欲がなくても、ほんのりと甘いくず湯は不思議においしく感じられました。くず湯の原料は、葛根(かっこん)という漢方薬として使われているもので、カゼの初期によく使用されるものです。カゼにくず湯という習慣は、これが民間に広まったものでしょう。有名な葛根湯という漢方薬は、この葛根を主成分としたものなのです。ではくず湯は漢方薬といえるのでしょうか。民間薬と漢方薬の違いを見てみましょう。 

書物のなかには、漢方薬は複数の薬、民間薬は一種類の薬を使用すると書かれているものもあります。しかし、これは結果であり根本的な相違ではありません。人参のみから成る漢方薬(独参湯(どくじんとう)もあるからです。 

東洋医学にはきちんとした論理があり、この上に診断方法や治療方法が組み立てられていることは述べました。ですから、東洋医学的な考え方に基づき判断し使用されてはじめて(東洋医学の)漢方薬といえるのです。 例えばショウガ。民間薬でも東洋医学でもともにカゼのときに使用されます。

しかし、何の考えもなくどのような力ゼにでも機械的に使用されるのが民間薬的な使用方法となります。これに対し、東洋医学では寒けが強いカゼに使用され、 熱感が強いときには用いません。というのも、ショウガは体を温める作用があるという考え方があるからです。実は葛根(くず)も、東洋医学では寒けが強いカゼに使用される漢方薬なのです。もう一つ例を挙げれば、下剤として有名な大黄(だいおう)、東洋医学では、体が弱い人(虚証―きょしょう)にはあまり使用しません。

たしかに現在、民間薬のなかには東洋医学で使用されるものや、逆に以前から民間で使われていた薬を東洋医学で取り上げ使用した例も多くみられます。とはいえ漢方薬と民間薬との違いは、あくまで薬の種類にあるのではなく、理論的に使用するかしないかによるのです。

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