東洋医学と西洋医学とはどのように異なるのですか

東洋医学と西洋医学を比較して、その特徴についていろいろ取り沙汰されることも少なくありません。
東洋医学肯定派の意見としては、「東洋医学はひとりの病人としてみるが、西洋医学は病気しかみない」「漢方薬は自然のもので副作用がなく安心」などがあり、 さらには「神秘的だ」などと賛美するものもあります。否定的な見方としては、「古臭くていかがわしい」「非科学的で信用できない」「哲学的で難解」「伝染病の撲滅など社会医学がない」「カンであいまいに治療している」などが代表的なものでしょう。要するに「科学的で信用できる西洋医学」に対し「人間的で安心できる東洋医学」とまとめられそうです。
ですが実はこの否定派の意見のほうが、より東洋医学の本質をいい当てているように思われます。両医学の相違について、歴史からみてみます。

東洋医学は中国民族(漢民族)が生れたときからの医学が現在まで引き継がれ、徐々に発展してきたもので、3000年以上の歴史があります。またこの間、他の医学の影響はほとんど受けませんでした。つまり古代の健康や病気に対する考え方がその基本となっているのです。東洋医学は西洋近代科学の考え方の洗礼を受けていない医学といえるのです。
西洋医学の歴史は意外に新しく、15世紀の西洋ルネッサンス以後に発達したものです。それまでの古い考え方を否定し、実験などで証明され確認されたもののみを信用するという、いわゆる科学的実証的な医学として発達しました。つまり、血液データやレントゲン、解剖などによって、病気を解明するようになったのです。そのために診断や治療・治療効果の判定などは、あいまいさをできる限り排除して科学的理論的に行うようになりました。つまりだれが見ても納得でき、かつだれにでもその方法が使用できるという客観的、普遍的な医学となったのです。そして、病気の姿や予防法などを集団的に考える方法が取れるようになりました。自覚症状などのあいまいなものを基準にする必要がなくなったからです。 しかし、その結果一人の病人に向き合うという姿勢が、ややもすればないがしろになる危険性も生み出したのです。
これに対し古代に起源をもつ東洋医学には、時代的な制約から科学的方法が存在しませんでした。そのために、自覚症状や体にあらわれた異常症状(他覚所見ーたかくしょけん)と、聞く・見る・触るなどの医師の五感による診察結果から、病気の姿を言葉で考えていく方法を取らざるを得なかったのです。
例えば、皮膚が紫色だから血液の流れが停滞している、温めると痛みは軽快するから体は冷えているなどです。つまり、西洋医学にくらべどうしても客観性・普遍性は低くなります。とはいえ、東洋医学でも客観性や普遍性を軽視したわけではなく、東洋医学なりに重要視していたのです。このことは中国古代哲学であり宇宙観・自然観である陰陽五行論(いんようごぎょうろん)を、病気を考える上での根拠としたことからも理解できます。これらの理論は、世界の姿を理論的に筋道だてて説明しようとした考え方であり、その当時にあっては十分に客観性・普遍性をもったものだったからです。これが哲学的だといわれるゆえんです。 同時に、正月の屠蘇散(とそさん) の由来のように、いろいろな風俗習慣や年中行事などと関連をもつこととなったのです。つまり日本文化と関連がある医学なのです。
自・他覚症状から病気を考えていくという東洋医学の方法は、個人の症状を基準として病気を考えていくものであり、結果として個人を重視する治療や予防方法となりました。これが人間的といわれる理由でしょう。しかし西洋医学のような社会医学の発達を遅らせたことも事実です。

また西洋医学では、科学的方法を用いて病気を起こす原因の追究に力を入れてきました。伝染病の撲滅など、その成果には目を見張るものがあります。しかし、 自律神経失調症や冷え性、虚弱のように科学的に証明できないために治療方法が確立していない病気もまた多く、さらに生命力の増強など不得意な治療分野もあります。
これに対し東洋医学の守備範囲は広く、生命力の増強など西洋医学より優れた治療・対処方法も存在します。これは自他症状から病気を考え、さらにそれらを治療しようという東洋医学のやり方が、結果として幅広い病気を治療できるようになったといえます。
以上みてきたように、東西両医学にはいろいろな相違があります。しかしこれらは、その発展や方法の違いから生み出されてきたものであり、人間的・非人間的などという優劣というよりも、いわば両医学の特色といえるものです。

よくいわれる東洋医学と西洋医学の相違

東洋医学西洋医学
歴史約3千年約500年
民族文化との関連民族伝統医学
関連性あり
普遍的世界的
関連性少ない
考え方(根拠)陰陽五行論=言語による
        ↓
哲学的・全体的・人間的・個人的
実証的研究=科学データによる
     ↓
科学的・分析的・物質的・社会的
診断方法人間の五感中
あいまい
カンの要素あり
自覚・他覚症状
検査を重視
実証的
理論的
形態学的
治療方法(薬)天然物
(方法)薬・鍼・灸・運動療法
(長所)幅広い・生命力増強
化学合成品
薬・手術・X線etc.
確実性・原因の除去
効果測定症状による→主観的検査データによる→客観的
予防方法個人的集団的

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